2006-05-09

30代が主役

何の気なしにテレビのチャンネルを回していたら、作家の村上龍が二人の若者を相手に対談をしていた。

テレビ東京の「カンブリア宮殿」という番組だ。5月9日のゲストは、ミクシィ社長の 笠原 健治氏と、はてな社長の 近藤 淳也氏だった。なんとふたりはちょうど30歳。

ミクシィの笠原氏、はてなの近藤氏は、孫、三木谷に続く次世代のネット起業家と言われており、どちらのサービスも日頃お世話になっている。

ミクシィは日本のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス。知人の紹介による会員制ネットコミュニティ)の最大手、はてなは知りたいことを文章で質問すると、ネット上のユーザーが回答を寄せてくれるシステム、どちらも基本的には無料もしくは低料金で利用できる。

笠原氏は東大出身、近藤氏は京大出身で学歴だけ見るとエリートのように見えるが、官僚を目指すようなテストの点数だけが高いエリートとは決定的に違う点がある。

それは二人とも自分たちのサービスを利用するユーザーのために有用なシステムを提供したいと考えており、顧客からの要望を徹底的に吸い上げ、圧倒的なスピードでシステムやサービスを改善することが大事だと言い切るところだ。

経営者が顧客満足を最大に考えるというのは当然だが、30代の若い企業家兼技術者が「ユーザーの要望を吸い上げ、改善し続けることが重要」と言うのはいろんな意味で強い。スパークスシステムズ ジャパンのこうのさんもこの2人と考え方が一致していると思う。

この考え方は、『組込みソフトエンジニアを極める』でも引用したコトラーのマーケティング・マネジメント 基本編に出てくる、顧客が組織を駆動し、マーケティングが各機能を統合する顧客中心の考え方だ。これまでの企業は財務、人事、製造、マーケティングが同じ重要性を持っており、顧客の存在は薄かった。

30代の若い優秀なエンジニアが顧客駆動の考え方でがんがん攻めてくるとこれは強い。もう何でもありだ。はてなの近藤社長は、スタッフ会議の様子をネットに動画配信しその会議の内容についてネット上のユーザーに意見を求めていた。

でも、これと同じようなことをおじさん達がたくさんいる組込みメーカーでやろうとする目を丸くされた上で、さまざまな障壁が立ちはだかる。大抵の場合は障壁を目の前にして新しい試みに嫌気がさしあきらめることになるのだが、Lifehacks って知ってた?のコラムで紹介したように若いエンジニア達のITスキルを解放して業務を変革することが組込みメーカーにも今求められている。

SEの実力を磨く究極仕事術―問題解決・図解術・会議の技術・メール術・プレゼン・時間管理術・やる気創造法という日経SYSTEM編のムック本に書いてある「やる気を阻害する要因となっている人や組織」の上位を紹介すると

1.上司(55.9%)
2.勤務先の会社(53.6%)
3.同僚/チームメンバー(32.4%)
4.顧客/ユーザー(23.5%)
5.部下(19.1%)

※複数回答可。有効回答数=1613人

となっている。これはITエンジニアの例だが、いかに上司や勤務先の会社がモチベーションを低下させる要因となっていることか。

組織は30代の優秀な技術者の発言に耳を傾け、彼らのやる気をそがず、技術者のモチベーションが顧客満足の高い商品やサービスにつながるような手だてを考えなければならない。

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