2006-04-22

どんな本を読むといいか?

どんな本を読んでいるのかがわかるとその人がどんなことを考えているのか分かることがよくある。最近雑誌に書評が掲載されることが少なくなったが、書評のランキング記事はいつも人気がある。人がどんな本を読んでいるのかを眺めているとおもしろい。

今回は、『組込みソフトエンジニアを極める』の巻末に掲載した参考図書を掲載したいと思う


【参考図書より 引用】

-マイコン・リアルタイムOSー

マイコン・リアルタイムOSを使いこなすには座学だけでは難しいものです。実際に動くターゲットマシンをさわりながら学習する必要があります。

[1] 各マイクロコンピュータのデータブック
ぼろぼろになるまでマイコンのデータブックを読み込む。これが基本です。

[2] リアルタイム/マルチタスクシステムの徹底研究―組み込みシステムの基本とタスクスケジューリング技術の基礎
TECHI 藤倉 俊幸 (著) CQ出版社 2003年
リアルタイムシステムについてとことん突きつめたい方におすすめです。

[3] μITRON4.0標準ガイドブック
トロン協会 (編集), 坂村 健 2001年 パーソナルメディア
μITRONのガイドブックは一冊持っていると辞書代わりになります。

[4] CPUの創りかた
渡波 郁 (著) 2003年 毎日コミュニケーションズ
CPUをICの組み合わせで作る方法が書かれた本。データブックや回路の読み方、テスターの使い方まで解説してあります。電気回路の知識がまったくないソフトウェアエンジニアに最適です。


-オブジェクト指向設計・UML-

オブジェクト指向設計を習得したいのなら、自分にとってわかりやすい本を一冊選び、まずはUMLを書いてUMLの経験者にレビューしてもらいましょう。それが一番の早道です。

[5] 組み込みUML―eUMLによるオブジェクト指向組み込みシステム開発 
渡辺博之、渡辺政彦、堀松和人、渡守武和記 著 , 翔泳社 2002年
組込みソフトでオブジェクト指向設計を適用する詳細を解説した数少ない書籍のひとつです。

[6] オブジェクト指向でなぜつくるのか―知っておきたいプログラミング、UML、設計の基礎知識―
平澤 章 (著) 2004年 日経BP社
なぜ、オブジェクト指向に関心があつまるのか、オブジェクト指向でプログラムを作るとどんなメリットがあるのか初心者にもわかりやすく解説しています。

[7] ダイアグラム別 UML徹底活用
DB Magazine SELECTION, 井上 樹 (著) 翔泳社 2005年
UMLの書き方はマスターしたけれども、UML経験者が近くにおらずもう一歩先に進めず停滞している人にお勧めの一冊。

[8] 初めてのEnterprise Architect
河野岳史・益田志保 著 星雲社 2005年
UMLの初心者からUMLを使いこなすベテランまで広範囲に使える安価で高機能なUMLツールのマニュアル本。UMLはまず書き始めるにことが大事です。


-C++-

CからC++に移行するときの壁は非常に高く感じられます。いきなりC++でソースコードを書き始めるには無理があります。初心者向けの本をマスターしてからコードを書き始めましょう。

[9] C++プログラミングスタイル
山下 浩 (著), 黒羽 裕章 (著), 黒岩 健太郎 (著) 1992年 オーム社
基礎をしっかり身につけ、後で調べものをしたいときに役立つ本です。C++の入門書として優れています。

[10] C++のからくり  
スティーブン・R. デイビス (著), Stephen R. Davis (原著), 瀬谷 啓介 (翻訳) ソフトバンククリエイティブ 1999年
CからC++に移行するとき、「なぜ、できないの」と悩むときの答えがこの本に書いてあります。演習問題を解きながら理解できるのでC++初心者の教育にも使えます。

-プロジェクトマネージメント-

[11] 人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない
新装版 Professional Computing Series
フレデリック・P,Jr. ブルックス (著), Frederick Phillips,Jr. Brooks (原著), 滝沢 徹 (翻訳), 富沢 昇 (翻訳), 牧野 祐子 (翻訳) ピアソン・エデュケーション 2002年
やみくもにプロジェクトに人を投入するとどうなるのかが分かります。ソフトウェアプロジェクトの失敗学の原点とも言える一冊です。

[12] 製造業のためのソフトウェア戦略マネジメント入門―組み込みソフトの開発・人材・組織
前田 卓雄 (著), 重岡 毅 (著)  生産性出版 2003年
ソフトウェア開発におけるプロジェクトマネージメントの入門書で、ソフトウェア事業のマネジメントという視点で書かれた本。


-ヒューマンスキル-

[13] ピープルウエア 第2版 - ヤル気こそプロジェクト成功の鍵
トム・デマルコ (著), ティモシー・リスター (著), 松原 友夫 (翻訳), 山浦 恒央 (翻訳), 日経BP社 2001年
プロジェクトマネージメントをテクニックではなくヒューマンとして何が必要かを説いています。ソフトウェアエンジニアのやる気を科学していると言えるかもしれません。

[14] スーパーエンジニアへの道―技術リーダーシップの人間学
G.M. ワインバーグ (著), 木村 泉 (翻訳)   共立出版 1991年
技術リーダーとしてどのように振る舞えばよいのか、また、リーダーどう育てるのかが分かります。

-テスト-

ソフトウェアテストに関する解説書は皆無に等しかったのですが2002年頃から次々と良書が出版されています。

[15] 実践的プログラムテスト入門―ソフトウェアのブラックボックステスト
ボーリス バイザー (著), Boris Beizer (原著), 小野間 彰 (翻訳), 石原 成夫 (翻訳), 山浦 恒央 (翻訳) 日経BP社 1997年
テストについて学習したいのならこの一冊から。新人からベテランまで使えます。

[16] ステップアップのためのソフトウエアテスト実践ガイド
大西 建児 (著) 日経BP社 2004年
実際のテスト工程の進め方や注意点が筆者の経験をもとに詳しく書かれています。テスト計画をどのように進めればよいかが分かります。

[17] 初めて学ぶソフトウエアメトリクス~プロジェクト見積もりのためのデータの導き方
ローレンス・H・パトナム (著), ウエア・マイヤーズ (著), 山浦 恒央 (翻訳)
日経BP社 2005年

ブラックボックスになりやすいソフトウェアをいかに計測し、品質管理に活かすかを解説した本です。プロジェクトマネジメントやソフトウェアテスト管理に役立つ一冊です。


-ソフトウェア品質-

[18] ソフトウェア品質保証の考え方と実際―オープン化時代に向けての体系的アプローチ
日科技連出版社 1995年, 保田勝通,
ソフトウェア品質保証の基礎から応用まで隅々を網羅しています。1995年の初版から10年経過しても古さを感じさせない充実した内容です。

-マーケティング-

[19] 通勤大学MBA1 マネジメント
通勤大学文庫 グローバルタスクフォース (著)  総合法令出版 2002年
MBA「Master of Business Administration(経営学修士号)」の概略が分かるもっともコンパクトな一冊。マーケティングの基礎を短時間に学ぶことができます。

-体系的再利用・プロダクトライン-

[20] ソフトウェアプロダクトライン―ユビキタスネットワーク時代のソフトウェアビジネス戦略と実践
Paul Clements, Linda Northrop, ,前田卓雄(訳),日刊工業新聞社,Sep. 2003
原書はCMMI(Capability Maturity Model:能力成熟度モデル)を主導するカーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所(SEI Software Engineering Institute)が10年近く検討を進めている Product Line Systems Programの中核となる出版物。プロダクトラインについて学ぶなら手元に置くべき一冊でしょう。

[21] ソフトウェア再利用の神話―ソフトウェア再利用の制度化に向けて
ウィル トレイツ (著), Will Tracz (原著), 畑崎 隆雄 (翻訳), 鈴木 博之 (翻訳), 林 雅弘 (翻訳)  ピアソンエデュケーション 2001年
ソフトウェアの再利用がいかに難しいかが分かる本。ソフトウェアの再利用にどんな壁が立ちふさがるのか筆者の経験が豊富に織り込まれています。

-日本の組込みソフトウェアの強み-

[22] 日本のもの造り哲学
藤本 隆宏,,日本経済新聞社,2004年
製造産業としての日本の強みと特徴を具体的な生産現場の視点から分析している。すり合わせと組み合わせの違いについて納得させられる一冊。

【引用おわり】

この中でもおすすめなのは、[19] 通勤大学MBA1 マネジメント 。この本は文庫本サイズで税込み893円というお手頃な価格だ。通勤大学シリーズはシリーズになっていて他にもいいものがあるが、何しろMB1 マネジメントはシリーズ全体の概要をつかむ意味でも有益だと思う。難しい本を読むよりも、この本を暗記するくらい熟読した方がいいような気がする。

学生の頃、薄いいい本を一冊選んでその本をぼろぼろになるまで読め!と言われたが、まさにそのとおりである。

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