2007-03-23

組込みソフトで成功できるエンジニアはひとにぎり?

最近、組込みソフトで「成功できる」「楽しく仕事ができる」エンジニアはひとりにぎりではないかと思い始めた。

何を持って成功なのかという話はあるが、ここでは次の2つの条件を含めたい。
  1. クリエイティブでやりがいがある。プロジェクトが終わったときに達成感がある。
  2. 今は大変でも、次は楽になるという希望がある。
大事なのは「クリエイティブ」というところと「次は楽になる」というところ。

組込みソフトもソフトウェアの規模が小さいときは、どんな組込みの現場でもこんな感じだったと思う。ソフトウェアシステムの全体を把握できたし、自分が作ったソフトウェアがダイナミックに製品の振る舞いに反映された。

プロジェクトが終わったときは達成感があり、そのドメインに特化したスキルが身についたことで次の開発では少し余裕ができ、顧客満足を高めるための新しい工夫を考える楽しみがあった。

ところが、今はソフトウェアシステムの規模が大きいので状況が様変わりしている。

まず、プロジェクトメンバの人数が多いのと、関係会社、協力会社との連携が必要になり、技術よりも人間関係やコミュニケーションに時間が取られる。

技術的なことだけやりたいエンジニアも年を重ねると、人のマネージメントをやらされる羽目になる。そして、製品の仕様は自分ではなく誰かに決めてもらうようになって、仕様変更に振り回される。

自分のプロジェクトが成功すると、周りに火を噴いているプロジェクトが必ずあるので、そっちを手伝わされたり、プロジェクトごと合併されたりする。自分たちが確立した効率化の成果をさらに発展させてくれるようにはならず、ひどい悪循環のプロジェクトにぶち込まれて、こっちも効率化することを強いられる。

大規模化した組込みソフトウェアのプロジェクトを成功させるには3つの要素がどれも優れていないといけない。
  1. ソフトウェアの技術力
  2. 要求の分析力と実現能力
  3. チームビルディングの能力
ソフトウェアの技術力が高くてもダメ、要求の分析力と実現能力がないとダメ。ソフトウェアの技術力と要求の分析力、実現能力が高くてもチームビルディングの能力がないと、パワーを一つにまとめることができず開発を成功に導けない。

そして、この三つの要素がどれも満たされプロジェクトが成功しても、その様子を見ていた組織の上位層は成功したプロジェクトのメンバを火を噴いたプロジェクトに回してしまう。

プロジェクト内で一際能力の高さを誇るエンジニアがいると、そこに仕事は集まる。どんどん集まって際限がない。効率を上げれば上げるほどより多くの仕事が振られる。

こんなことが成り立つのはお人好しの日本人だけではないだろうか? 仕様が決まってなかろうが、大幅に仕様を変更されようが、ぶつぶつ文句を言いながら残業して製品を仕上げてしまう。自己犠牲をいとわない国民性・・・

こう考えると、優秀な組込みソフトエンジニアは流動すべきなのかもしれない。流動しないから同じ給料で仕事を振りかけられるのだ。我慢しないで自分の能力や実績を可視化して「評価しないとさよならするぞ」と言えるくらいにならないといけない。

日本のエンジニアはみな奥ゆかしいので自分の成果をアピールするのが下手だ。でも、これからはそれができないと、クリエイティブな仕事や達成感、いつかは楽になるといった感覚を得ることはできないのが今の組込みソフトを取り巻く環境だ。

こんな状況だから、組込みソフトの魅力よりもつらさの方が強くなって人材も集まらない。人材が集まらないから残された技術者に負担がのしかかる。

あまり考えたくないのだが、こんな状況では組込みソフトエンジニア全員がパッピィになるのは難しいように思えてくる。

組込みアーキテクトはギルドを作って、自分たちの立場を主張できるようにならないと浮かばれないのではないかとも思う。

技術を磨いただけではダメで3拍子そろっていないといけないのなら、達成できたときの評価や見返りは満足感だけでもいいからたくさん欲しい。

こんなことを思う今日この頃である。ちょっと悲観的すぎかなあ・・・

どうも、エンジニア系のブログや業界の周りの人たちを見聞きしているとこんな感覚になってしまう。
 

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