2010-02-09

プリウスブレーキ制御ソフト改変についての考察 (その後)

2月7日、フジテレビの夜『情報エンタメLIVEジャーナる!』で、プリウスのブレーキ問題を再現していた。テレビはすごい。現象を再現できるユーザーを捜し出したのだ。

場所は完全な雪道でスピードは30km/h くらいからゆっくり減速している状況で、カーブなどにさしかかったり、ブレーキを軽く踏んだりしたときに現象は起きる。

運転手の横に座っているカメラマンやディレクター、車を外から撮っているカメラマンにはその現象が起こったことは分からない。

運転手が「ほら、これ」といっても違いがわからないのだ。しかし、スピードメーターをプレイバックしてスローで見てみると30km/h からゆっくり減速しているのに、22km/h くらいのときに約1秒くらい数km/h くらいスピードメーターの値がアップする。これが1秒間の空白で、スカッと抜けた感覚なのだという。

20~30km/h 程度の低速走行時の雪道でブレーキを踏んだときの1秒間の抜ける感覚。確かに危険性は小さいのかもしれないが、効くはずのブレーキが一瞬でも効かない感覚はさぞ気持ち悪いだろうと想像する。

さて、2月9日に豊田社長は記者会見で、以下のように語っている。
私自身、プリウスを運転した。対策前の車は滑りやすい路面を走ると、(ブレーキを踏んでも)「抜ける」という表現が一番しっくりくる。速やかに直すのが、信頼回復の第一歩と思った。
自分自身で現象を確認するとは、さすがだと思った。ただ、正確には下記のような現象のようなので、制動距離はわずかだが長くなっているという事実はきちんととらえておく必要がある。
今回の不具合は、寒冷地の凍結路などで横滑りを防止するためABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が作動することでブレーキがかかりにくくなるというもの。氷の上など横滑りしやすい路面で時速20キロメートルと低速で走行しながらブレーキを踏み込む場合、クルマが停止するまでに必要な距離が13.6メートルと従来型プリウスよりも1割程度長くなる。従来よりも滑らかに停止できる一方で、ブレーキの立ち上がりが一瞬遅れる。
「快適性を追及しすぎた面があるかもしれない」というのはたぶん違うように思える。スカッと抜ける感覚は決して快適ではないからだ。

ただ、豊田社長が自ら記者会見にのぞみ、トヨタは「全能ではないが、失敗は必ず修正・改善してきた強い自信ある」とし、信頼回復のために全社一丸となりまい進する姿勢を強調したのはさすが並の会社ではないと思った。

新しい取り組みの中には必ず見落としや失敗はある。我々は全く新しい取り組みを行う際には、まず、ユーザーに対して大きな不利益にならないようにリスク軽減策に万全を尽くす。しかし、必ずこぼれ落ちる不具合はあるので、それが発現してしまったら修正と改善を粛々と行う。その際に反省は必要だが、くよくよしてはいけない。過去のことを考えるのではなく未来に同じ失敗を繰り返さないように再発防止の取り組みに邁進することが最も重要だ。

そのような再発防止の取り組みを続け水平展開してゆけば、技術は枯れ、信頼性・安全性は増す。ソフトウェア的に言えば堅牢な再利用資産になっていくのだ。

不具合が発見されたときはシステマティックに原因を追及し、是正・予防処置をし、再発防止策をノウハウとして蓄積し、再利用資産の構築の際にそのノウハウを使う。これによって、商品の潜在的価値が高まる。実際には、その価値をモデルや分析結果という形で可視化しないと組織の資産にはならない。トヨタの中で今回の件の再発防止策が可視化された形で組織内に蓄積されるかどうかは外側からは分からない。

業界的には分析結果を公表してくれれば再発防止に役立つのだろうが、残念ながらトヨタにその義務はない。

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