2009-01-04

日米エンジニアの満足度の違い

2009年最初の記事は、「日米エンジニアの満足度の違い」についてである。このデータはフリー情報誌の EE Times の昨年の記事から引用した。

EE Times は多くの記事が米国発の情報で、今回のデータは米国と日本の読者からのアンケートの集計結果である。

EE Times の読者はどちらかというとデジタル系のハードウェアエンジニアが多いと思うが、ソフトウェアエンジニアも読んでいると想像する。ということでアンケートの対象はハードウェアとソフトウェアの両方のエンジニアを包含したものだと考えればよいと思う。

【日本のエンジニアの特徴(回答者 1420人)】

平均年齢:43.6歳
平均年収:758万円
平均勤務時間:51.3時間/週
平均職務年数:18.3年
平均転職回数:0.8回(転職経験あり:44%)

【米国のエンジニアの特徴(回答者 1158人)】

平均年齢:46.0歳
平均年収:11.4万ドル(約1140万円)
平均勤務時間:46.5時間/週
平均職務年数:20.9年
平均転職回数:3.1回(転職経験あり:80%)

これらのデータを眺めてみると、円高になっても日本のエンジニアは平均年収が300万円以上少なく、平均勤務時間が長い。転職は米国に比べて圧倒的に日本が少ない。エンジニアが浮かばれない日本、これが現実なのかとがっかりする。・・・がでもよく考えてみよう。

組込み機器に限って言えば、市場に流通している製品のできは給料が安く、より多くの時間働いている日本の商品の方が品質がいいんじゃないだろうか。より組込み機器で顧客満足を満たすことができているのは、日本のエンジニアではないだろうか?

もしも、自分たちが市場に送り出している商品の方が、より顧客を満足させている自信があるのならエンジニアとして胸を張っていいはずだ。

ここで日本のエンジニアのみんさんによく考えて欲しいのは、こんな結果が出ているからといって日本のエンジニアの待遇が高くなればいいという単純なことではないということだ。

日本とアメリカでは環境も違うし、日本のエンジニアとアメリカのエンジニアの気質はかなり違う。アメリカ人と同じように平均転職回数が3回になったら、当然技術力をアピールできなければ生き残れないだろうし、日本人としての「あたたかい人間関係の中のやさしい一員」という特長を活かしたものづくりはできないかもしれない。

次に日米のエンジニアの満足度に関するデータを見て欲しい。

2008.12 EE Times Japan p77 図6 エンジニアの満足度など より引用

分野 評価項目 日本米国
満足 エンジニアという職業に満足している 86% 89%
自分のキャリアに満足している 61% 86%
自分のスキルは他のエンジニアと同等以上 60% 90%
自分の子供もエンジニアになってもらいたい 50% 76%
上記4項目平均 64% 85%
尊重度 私の会社はエンジニアを尊重している 56% 80%
私の会社は以前よりもエンジニアを尊重している 42% 48%
現在の会社は以前よりもエンジニアを尊重している 33% 43%
自分の置かれている状況は他の職種と比べて同等以上 44% 76%
上記4項目平均 44% 62%
先進性 私の会社の技術は最先端のものである 44% 67%
私の同僚のエンジニアの技術力は最新のものである 40% 74%
仕事で使っている機器は最新のものである 44% 74%
私の会社は革新性や創造性に力を入れている 46% 72%
私の会社はエンジニアの革新的な成果に報いている 32% 61%
上記5項目平均 41% 70%
快適性他 私の会社はよい職場である 60% 81%
同じ会社に長く勤めたい 70% 68%
上司に対して自由に反対意見を言える 68% 82%
私の会社は少数の経営者だけで意志決定を行う 64% 75%
私の会社はマーケット志向である 53% 85%
上記5項目平均 63% 78%

日本のエンジニアは「尊重されておらず」「満足もなく」「技術力も低い」が会社を辞めたいとは思わないと言っているように見える。

厳しいことを言えば、日本のエンジニアは技術力で勝負していない、技術力に自信もない、会社にも認められていない、でも同じ会社に長く勤めたいと言っているのではないか。

まあ、会社組織の方もエンジニアを技術力で評価できているとは思えないし、エンジニアを尊重しているようにも思えないから、エンジニアも組織も両方とも変わらなければいけないのだと思う。

上記のエンジニアの満足度のデータはあまりにもひどいし、自分達を卑下しすぎている。この状況はなんとか変えていかなければいけないだろう。自分達が作っている商品は胸を張れるのに、自分の子供にエンジニアになってもらいたいとは思わないという状況はどう考えてもおかしい。

この状況を改善するためには、まずエンジニア個人はまず、「こんな会社飛び出してやる」と言えるだけの技術を身につけ、組織はエンジニアの成果がどのように商品価値に活かされたのかを評価し、その評価に見合った尊重をエンジニアに与える必要がある。

「尊重」というのは必ずしもお金だけだとは限らない。例えば、勉強の時間を与えるとか、学会やシンポジウムに参加させるというお金以外の待遇方法だってある。

お金や人はあなたを裏切ることをあるかもしれないが、教育や身につけた技術は決して裏切らない。エンジニアは組織が自分を守ってくれると思っているかもしれないが、実態のない組織はエンジニアを裏切ることだってある。

何はともあれ、エンジニアは技術力を身につけてその技術で勝負し、顧客満足を高めなければ道は開けないということだ。その努力をして、かつ組織を変えようとしても変わらないようなら、身につけた技術を引っさげて新たなフィールドに飛び出せばよい。

ただ、そのとき日本とアメリカの違いをきちんと認識し、日本人の特性、強みを忘れないようにしないといけない。

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