Embedded Technology 2008 が終わった。5月のESECと11月のETは組込み系の首都圏で開催される2大イベントで、これらの展示会に行くことでツール類の情報や、開発方法論の情報などをチェックする。
日頃、ソフトウェア開発に関するツールについて、「ツール至上主義はいけない」とか「ツールベンダーの口車に乗ってはいけない」などと言っているが、ツールについて最新情報をチェックしていない訳ではない。何が本当に役に立つのか、立たないのかの判断基準を自分の中にしっかり持ってツールを見定めているし、ツールベンダーの話も聞くようにしている。
そういう目で展示会の会場を回っていると、ツールを通してエンジニアを助けてあげたいと思っているツールメーカー、ツールベンダーと、時流にのって売り上げを伸ばすことだけを考えているツールメーカー、ツールベンダーが見分けられるようになる。
ツールメーカーは純粋にソリューションを提供したいと考え、ツールベンダーは売り上げしか考えていないとか、ツールベンダーの営業員によっても目先の売り上げだけを考えている者と、ユーザーと長く付き合うために何とか要望を聞いてあげたいと考える者がいるので、一概にあの会社はいいとか悪いとか言えないが、好ましくないベンダーは好ましくないユーザーがいるからこそ生き残ってしまうのではないかと思うことがある。
ET2008の展示会場で 富士設備工業(株)電子機器事業部 の浅野さんと話しをしていたときのことだ。(富士設備工業なんて、およそソフトウェアと関係ありそうもないが、実は海外の開発ツールを積極的に導入しサポートまで提供している)
富士設備工業(株)電子機器事業部 では、ソフトウェアプロダクトラインの支援ツール pure::variants を取り扱っている。今でこそ、ソフトウェアプロダクトラインはメジャーなキーワードになりつつあるが、たぶん日本で初めて話題になったのは2003年くらいからだと思う。当時、自分はEEBOFでソフトウェアプロダクトラインのことを知り、CQ出版の Interface誌 2003年12月号で『具体例で学ぶ組み込みソフトの再利用技術』というタイトルで自分がモデレータとなってソフトウェアプロダクトラインにも関係する記事を書いた。浅野さんはこの記事をことを覚えていてくれて、当時ソフトウェアプロダクトラインの情報源のひとつとして役に立ったと言ってくれた。
浅野さんとソフトウェアプロダクトラインを日本で成功させるのは簡単ではないという話をしていたら、お客さんの中にはツールを導入しても結果的にうまくいかず、ツールやそのソリューション自体に対して役に立たないという烙印を押してしまい、その経験がトラウマになってしまう人たちもいるということを聞いた。
自分はツールを導入するきっかけは、技術者個人がある状態から別の状態に変化すること、あるいは変化したいと思うことにあると考えている。
現在の状態では問題がある、効率が悪い、品質が上がらないので、それらの問題を解決し、開発効率がよい状態、ソフトウェア品質が高い状態に移行したいと考え、ツールが状態変化に必要だから導入するという考え方だ。
みなさんによく考えて欲しいのはソフトウェア開発は基本的にはソフトウェアエンジニアの日々の活動の成果の積み重ねであり、ソフトウェアエンジニアの頭の中で考えたことが最終成果物になるということだ。
ソフトウェア開発で何か状態を変化させるということは、すなわちソフトウェアエンジニア自身(正確に言えばエンジニアの頭の中)がある状態から別の状態に変わるということなのだ。だから、自分自身が変わる気はさらさらなく、ツールがソリューションを提供し成果物を変化させてくれるはずだと考えているとたいてい失敗する。
一番成功する確率が高いのは、技術者が自分自身で状態の変化を手作業で実現し、その手作業の工程を自動でやってもらうといケースだ。手作業で業務なりプロセスなり、活動なりを改善し、その一部をツールに任さるためにツールを導入するケースだ。すでにやったことがあって効率化を図るという方法ならほとんどの場合成功する。
それとは逆に自分自身が変わる気がなく、ツールを魔法の箱にように見たてて期待していても何も起こらない。高い金払ったのだから何か出せと言っても何もでてこない。
ただ、ツールを購入したことをきっかけにして、ツールを使いこなせるようになることで自分自身の変化のきっかけにする人はいると思う。でも、自分自身の変化の必要性の認識とそのたいへんさが十分に理解できていないと結局は途中でくじけてツールはお蔵入りとなる。
世の中には操作者が何も考えなくてもインプットを与えて期待するアウトプットを出力するタイプのツールもたくさんある。でもソフトウェア開発に使うツールはソフトウェア開発自体がひとつの方法論には集約できないのでそんな単機能のツールなど存在しないし、そのような単機能なツールはあったとしても一般化されているのでESECやETで物色することもないのだ。
ソフトウェア開発ツールには結局は何かしらのソリューションが隠蔽されているのだけれど、利用者側はそのソリューションがどんな問題を解決する方法論からきているのかを理解する必要があるし、場合によっては自組織や開発製品に合わせてツールの使い方をくふうしたり、ツール自体をカスタマイズしてもらわないと問題解決に有効でないこともよくある。
ツールを使うユーザーが自分自身の変化について心の準備ができており、変化しなければならない目的が明確になっており、その目的のためには多少の犠牲も必要というそれなりの根性があればツールは活きてくる。そのようなユーザーに手厚く援助してくれるツールメーカーやツールベンダーを見つけないといけない。
その自信がないユーザーはまずは、ツールを買うのでなくソリューション自体を学習したり、手持ちの道具を使って問題を解決してみることを考えるとよい。解決できる見通しが立ってからツールを導入すれば失敗はしない。
実は、Excel や Word やフリーのツールなどをくふうすることで解決できてしまう問題はたくさんある。そういう努力を日々やっていると、「なんで、わざわざこんなツールを作るの?」とクビをかしげたくなるようなツールも見えるようになってくる。
2008-11-29
2008-11-22
人生は実験
『広い心で聞く』の続きで、米国シリコンバレーを中心に経営コンサルタントとして活躍するKimberly Wiefing 氏のインタビュー記事の最終回である。
振り返って、日々の仕事の中で感じるのはエンジニアやマネージャの自信のなさだ。うまく回っていないプロジェクトほどサンドバッグのように右から叩かれると左に振れ、左から叩かれると右に触れてしまう。もちろん、広い心も持てないのでプロジェクトリーダーはジェネラス・リスニングもできない。
問題を解決しようと思っても誰も決断できない、誰かが話を切り出すのを待っている、誰かがダメだししてくれるのを待っている。日々の発言や行動に明確な根拠を持っていないからそうなる。
そういう状況でもキンバリー・ウィーフリング氏のような優秀なコンサルタントはネガティブな言い方はしない。必ずポジティブに自信を持って攻める。
結局、ダメだしして受動的に動いているようではダメだしする人がいなくなった瞬間にプロジェクトは立ちすくんでしまう。自立できるようにしなければ意味がないのだ。
エンジニアが自立するためには自分の発言や自分の行動に自信を持てるようにならなければいけない。ジェネラス・リスニングは技術者に自信を付けるのに役立つと感じる。時間をかけてジェネラス・リスニングを行うのは、相手に自信を付けてもらい、自立させて自分でどんどん問題を解決でききるようになってもらうためでもあると思う。
『問題解決能力(Problem Solving Skill):自ら考え行動する力』も参照されたし。
Life is an Experimentキンバリー・ウィーフリング氏の話を聞いてみて感じるのは自分の主張がはっきりしており、説得力があることだ。もちろん、主張の裏付けもある。
Wiefling: Some people tell me, “Kimberly, this kind of listening, this kind takes a long time. I’m very busy person.” Here’s the problem, though. Do you ever have a conversation with somebody, and you have the same conversation over and over and over again? This takes a lot of time. When somebody says something, if they think you didn’t hear them, you know what they do? They say it again. And if they don’t like the conversation, they come back and have another conversation with you. So what we find is spending this time on these kind of critical conversations actually is a lot faster than trying to rush through the conversation with non-generous listening skills.
Listening seems very passive, and sometimes it’s hard for people to understand how powerful it can be. When we’re listening, we’re sitting quietly. This is very difficult for some people to understand. How can listening be great leadership? It’s something you just have to try.
When you start really listening to people, they feel valued. When they feel valued, they start contributing more. When they start contributing more, more ideas come, they have good feedback about their performance, and everything improves in that working relationship and in the team. I and listen to somebody that you haven’t listened before.
ウィーフリング:「キンバリー、こういった聞き方は時間がかかる。私はすごく忙しいんだ」と言う人たちもいます。でも、そこに問題があるのです。あなたは、誰かと話をして、同じ会話を何度も繰り返したことがありませんか? これは大変時間がかかる行為です。何か言って、相手が聞いていないと思ったら、その人がどうするか、おわかりですか? また同じことを言うんです。また同じことを言うんです。会話に満足しなかったら、戻ってきて、もう一度話しをします。ここでわかるのは、実際、こうした決定的な会話にはそれなりの時間を割いた方が、ジェネラス・リスニングのスキルを用いないで会話を急いで切り上げようとするより、ずっと早く済む、ということです。
聞くという行為は、大変受け身なことに思われますし、それがどれほどの威力を持ち得るのか、理解しにくいこともあります。人の話を聞いているとき、私たちは黙って座っています。そのことがなかなか理解できない人々もいるのです。話を聞くことが、優れたリーダーシップであるものか、とね。それは、あなたがとにかく試してみるべきことなんです。
あなたが人の話を心から耳を傾け始めたら、相手は自分が重んじられていると感じます。重んじられていると感じると、人は今まで以上に貢献し始めます。貢献度が増せば、より多くのアイデアが浮かび、自分の業績についていいフィードバックがもらえる。そうすれば、そうした職場の人間関係やチームにおいては、あらゆることが向上していきます。私は皆さんに「やってみてください」とアドバイスするんです。人生は実験です。時間をかけて、試してください。これまで耳を傾けたことのなかった人の話に耳を傾けてください。
振り返って、日々の仕事の中で感じるのはエンジニアやマネージャの自信のなさだ。うまく回っていないプロジェクトほどサンドバッグのように右から叩かれると左に振れ、左から叩かれると右に触れてしまう。もちろん、広い心も持てないのでプロジェクトリーダーはジェネラス・リスニングもできない。
問題を解決しようと思っても誰も決断できない、誰かが話を切り出すのを待っている、誰かがダメだししてくれるのを待っている。日々の発言や行動に明確な根拠を持っていないからそうなる。
そういう状況でもキンバリー・ウィーフリング氏のような優秀なコンサルタントはネガティブな言い方はしない。必ずポジティブに自信を持って攻める。
結局、ダメだしして受動的に動いているようではダメだしする人がいなくなった瞬間にプロジェクトは立ちすくんでしまう。自立できるようにしなければ意味がないのだ。
エンジニアが自立するためには自分の発言や自分の行動に自信を持てるようにならなければいけない。ジェネラス・リスニングは技術者に自信を付けるのに役立つと感じる。時間をかけてジェネラス・リスニングを行うのは、相手に自信を付けてもらい、自立させて自分でどんどん問題を解決でききるようになってもらうためでもあると思う。
『問題解決能力(Problem Solving Skill):自ら考え行動する力』も参照されたし。
2008-11-15
広い心で聞く
『もっとも重要なリーダーシップ・スキル』の続きで、米国シリコンバレーを中心に経営コンサルタントとして活躍するKimberly Wiefing 氏のインタビュー記事の4/5回である。
自分は何でもいいから自分が持っていないものを相手が持っているときは、ジェネラス・リスニングができていると思う。自分自身がその知識や技術を吸収したいから、素直に「おもしろい、もっと詳しく話して」と言える。
では、実際には自分がすでに知っていること修得していることについて相手がしゃべり出したときはどうかと振り返ってみると、おそらく口には出していなくてもつまらなそうな顔をしていると思う。
ウィーフリング氏が言っている聞き方の訓練が必要というのがこういう事なのだと思う。自分のためではなく、相手の能力を引き出したり、チームの成功のために聞くための技術を使うということがリーダーには求められるのだ。
最近、NHKのクローズアップ現代という番組で、神奈川トヨタが心の悩みを抱える従業員をフォローアップするための部門を作り取り組んでいる様子を流していた。ある販売店の所長が終業後の事務所で若い営業員の話を延々と聞いているシーンがあった。営業員は自分が考える販売店の在り方などを所長に話しており、話が終わったのは23時を過ぎていた。この営業所では所長が部下の話をじっくり聞く取り組みを始めてから販売成績が上がったという。
これはまさに、ジェネラス・リスニングを実践しているということに違いない。
Listening Generously確かに我々は聞き方の訓練を受けていないかもしれない。そして、聞き方がうまい、話を引き出すことがうまい人の周りには優秀な人が集まっているような気がする。優秀な人が集まっているのではなく、それぞれの人が持っている能力を最大限に引き出すことができるからそう見えるのかもしれない。
Interviewer: So, can you tell us about the actual skills involved in generous listening? How do we do it?
Wiefling: Yes. Generous is very challenging. Most of the time, we are not trained in how to listen. So, in generous listening, you have to give people some motivation. “Why should I listen? It’s hard work to listen generously. Why bother?” So, when we do the workshops, first we must convince people that it’s a good use of their time. It takes time. It takes energy.
So, the first thing we do is we shoe people an exercise where we ask them to do a simple task, and we ask each person, “What is your answer? What is your answer?” And everyone answers a different way for the same task. And then they realize, “Oh my gosh! I cannot do this simple task. This other person was successful. Why couldn’t I be successful?
We do another little game, another little trick, each time showing them each person makes mistakes, but somebody in the group has the answer. So, now, they’re starting to get very curious. “What do other people see, that I am blind to? What are other people hearing that I can’t hear? What do other people know, that I am missing?”
Now we have them. Now they’re ready to listen, because they’re curious. It’s very interesting when you work with people who are so smart, and you give them a simple task, and show them individually you cannot do this task, but as a group you can succeed. Suddenly they become much more interested in listening to each other.
Then I show them generous listening. Generous listening is for problems that you can’t solve by yourself. It’s for creating new opportunities that you can’t create by yourself.
If someone is listening to me, and says, “Interesting! Kimberly, tell me more,” – four magic words: interesting, tell me more – then I can hear myself think more clearly.
If I am speaking, and no one’s listening, I quickly close down my ideas. That’s why generous listening is so powerful. It allows me to overcome my own self-limiting behavior.
インタビュアー:ジェネラス・リスニングに必要な具体的なスキルについて、お話いただけますか?どうしたら、ジェネラス・リスニングができるでしょうか?
ウィーフリング:ええ、ジェネラス・リスニングは非常に難しいスキルです。ほとんどの場合、私たちは聞き方の訓練を受けていません。ですから、ジェネラス・リスニングを行う場合、(聞き手の)皆さんに何らかの動機付けをしてあげる必要があります。「なぜ私が話しを聞かなきゃいけないんだ? 広い心で話を聞くなんて大変なことじゃないか。なんで、わざわざ?」(と人は言うでしょうからね)。ですから、ワークショップを行う際は、最初に、ジェネラス・リスニングが時間の有効な使い方なのだということを、受講生に納得させなくてはなりません。ジェネラス・リスニングには時間もかかりますし、エネルギーだって費やしますから。
そこで、私たちが最初にやるには、受講生の皆さんに課題を示し、単純な作業をさせて、一人一人に「あなたの答えは何? あなたの答えは何?」と尋ねることです。同じ作業に対して、みんな違う答え方をします。そこで、受講生は、「ええっ! この単純な作業が私にはできない。あの人はうまくできたのに。なんで私はうまくいかなかったんだろう?」と思います。
もう一つ、ちょっとしたゲーム、というか、お遊びをします。今回、一人一人は間違いを犯すけれども、グループの誰かは答えをわかっているということを教えるのです。すると、皆さん、すごく興味津々になります。「ほかの人たちに見えていて、自分には見えていないものって何だろう? ほかの人たちには聞こえていて、自分には聞こえないことは何だろう? ほかの人たちにはわかっていて、自分が見落としていることは何だろう?」とね。
こうして、受講生の皆さんの心をとらえます。こうなると、皆さん興味津々ですから、話を聞く心構えができています。頭の切れる人たちと一緒に取り組むのは、本当に楽しいものですよ。単純な仕事を与えて、一人一人ではできないけれども、グループとしては成功する、ということを示してあげるんです。すると、皆さん、お互いの話を聞くことに急に熱心になります。
そこで、ジェネラス・リスニングについてお教えするんです。ジェネラス・リスニングは、一人では解決できない問題を解くためのスキルです。自分一人では生み出せないチャンスを生み出すためのスキルなのです。
誰かが私の話を聞いていて、「面白い! キンバリー、もっと詳しく話してよ」と言ったら-面白い、私に、もっと詳しく、話して、というのは魔法の4ワードなんです-私は、さらにその物事に注意を傾けることができるようになります。
自分が話していても、誰も聞いていなければ、私は考えるのをさっさと打ち切ってしまうでしょう。そういうわけで、ジェネラス・リスニングというのは非常に効果的なのです。相手にジェネラス・リスニングをしてもらうことで、こちらは、自分を狭めてしまうような振る舞いを克服できるのです。
自分は何でもいいから自分が持っていないものを相手が持っているときは、ジェネラス・リスニングができていると思う。自分自身がその知識や技術を吸収したいから、素直に「おもしろい、もっと詳しく話して」と言える。
では、実際には自分がすでに知っていること修得していることについて相手がしゃべり出したときはどうかと振り返ってみると、おそらく口には出していなくてもつまらなそうな顔をしていると思う。
ウィーフリング氏が言っている聞き方の訓練が必要というのがこういう事なのだと思う。自分のためではなく、相手の能力を引き出したり、チームの成功のために聞くための技術を使うということがリーダーには求められるのだ。
最近、NHKのクローズアップ現代という番組で、神奈川トヨタが心の悩みを抱える従業員をフォローアップするための部門を作り取り組んでいる様子を流していた。ある販売店の所長が終業後の事務所で若い営業員の話を延々と聞いているシーンがあった。営業員は自分が考える販売店の在り方などを所長に話しており、話が終わったのは23時を過ぎていた。この営業所では所長が部下の話をじっくり聞く取り組みを始めてから販売成績が上がったという。
これはまさに、ジェネラス・リスニングを実践しているということに違いない。
2008-11-08
最も重要なリーダーシップ・スキル
『さまざまなリーダーのタイプ』の続きで、米国シリコンバレーを中心に経営コンサルタントとして活躍するKimberly Wiefing 氏のインタビュー記事の3/5回である。
上の人たちの会議で、それは売り上げのためなのか、ステークホルダにいい顔したいからなのか、誰かにした約束のためなのか、目標が不明確な泥沼のやりとりを聞くことがある。顧客満足を達成するという目標が忘れられると、プレッシャーに負けて中途半端な品質のまま商品をリリースしてしまうことがあるように思う。これは必ずしも確信犯ということではない。ウィーフリング氏がいう「ジェネラス・リスニング(広い心で話を聞くこと)」をしないために、下の者達が本当のことを積極的にさらけだすことをしなくなり、結果的にリスクが見えていないという状況を自ら作ってしまっているのだ。
ようするに「見なかったことにする」が寄せ集まってリスクとなり、そのリスクがフィールドで発現してユーザーに迷惑がかかるという構図だ。リーダーがそれに怒って「ジェネラス・リスニング(広い心で話を聞くこと)」と反対のことをし出すと、ますます、下は正直なことを言わなくなりリスクは拡大する。
確かに、「ジェネラス・リスニング(広い心で話を聞くこと)」は最も大事なリーダーシップ・スキルかもしれない。
The Last Leadership Skillウィーフリング氏が挙げている組織が目標を達成できない理由のひとつ、「目標を持っていないか、目標があいまいであるか、みんなが目標を同じように理解していない」というのはよく分かる。ただし、リーダーがこれが原因で組織が失敗することのないようにする責任があるというのは、改めて確かにそうだよなと思った。
Interviewer: You say there are two reasons that teams fail to achieve their goals. What are they?
Wiefling: The top two reasons, on average, typical teams fail to achieve their goals – the number one reason is: they don’t have goals, or goals are unclear, or people don’t understand the goals the same way. It’s a very preventable cause of failure, and every leader is responsible for making sure this is never a cause of failure for their teams.
The number two most common reason for teams to fail, especially in this world, this global economy, is communication. Communication is the only way we have to lead other people, to influence other people. And yet, we are given very little guidance on the most important part of communication, and that is listening. Listening is the lost leadership skill. Everybody’s good at talking.
Interviewer: And so that’s why you teach what you call “generous listening”?
Wiefling: Generous listening. Most listening is listening for what’s wrong with what the other person is saying. This kind of listening filters out many ideas. When we’re working in a organization where we need every idea, generous listening helps expand possibilities. In generous listening, it’s not the responsibility of the speaker to be interesting or to have something valuable to say. The generous listening puts the responsibility on the listener to find, “What’s valuable here? What am I listening to that is important? And I am responsible for increasing the quality of the conversation by the quality of my listening.” It’s a unusual approach to conversation, I find.
最も重要なリーダーシップ・スキル
インタビュアー:組織が目標を達成できないのには、2つ理由があると、おっしゃっていますね。その理由とは何ですか?
ウィーフリング:典型的な組織が目標を達成できない理由の、平均して上位2つに入るものは-第1位は、目標を持っていないか、目標があいまいであるか、みんなが目標を同じように理解していない、ということです。これは、失敗の原因としては防ぐのが容易なもので、どのリーダーも、これが原因で組織が失敗することがないようにする責任があります。
2番目によく見られる、組織の失敗の理由は、特にこの世界、グローバル経済の世界にあっては、コミュニケーションです。コミュニケーションは、ほかの人々を導き、ほかの人々に働き掛けるための唯一の手段です。ところが、コミュニケーションの最も重要な部分に関して、私たちはまったくといっていいほど指導を受けていません。それは、聞くということです。聞くことは、人々に忘れられてしまった、リーダーシップ・スキルなのです。誰でも話すことは達者です。
インタビュアー:だから、あなたはいわゆる「ジェネラス・リスニング(広い心で話を聞くこと)」を教えていらっしゃるわけですね?
ウィーフリング:ジェネラス・リスニングですね。(人が話を)聞くときはたいてい、相手の話の間違いを耳にそば立てるような感じです。こうした聞き方は多くの優れたアイデアを排除してしまいます。あらゆるアイデアを必要とする組織で働いている場合、ジェネラス・リスニングが可能性を広げることに一役買います。ジェネラス・リスニングの場合、話し手が興味深い人物だったり、有益な意見を持っていたりする責任はありません。ジェネラス・リスニングは、聞き手の側に、「ここで有益なことは何か? 自分が聞いている中で重要な部分はどこか? 私には、自分の聞き方の質によって、この会話の質を高める責任があるのだ」ということを理解する義務を課します。これは会話に対するアプローチとしては珍しいものだと思いますね。
上の人たちの会議で、それは売り上げのためなのか、ステークホルダにいい顔したいからなのか、誰かにした約束のためなのか、目標が不明確な泥沼のやりとりを聞くことがある。顧客満足を達成するという目標が忘れられると、プレッシャーに負けて中途半端な品質のまま商品をリリースしてしまうことがあるように思う。これは必ずしも確信犯ということではない。ウィーフリング氏がいう「ジェネラス・リスニング(広い心で話を聞くこと)」をしないために、下の者達が本当のことを積極的にさらけだすことをしなくなり、結果的にリスクが見えていないという状況を自ら作ってしまっているのだ。
ようするに「見なかったことにする」が寄せ集まってリスクとなり、そのリスクがフィールドで発現してユーザーに迷惑がかかるという構図だ。リーダーがそれに怒って「ジェネラス・リスニング(広い心で話を聞くこと)」と反対のことをし出すと、ますます、下は正直なことを言わなくなりリスクは拡大する。
確かに、「ジェネラス・リスニング(広い心で話を聞くこと)」は最も大事なリーダーシップ・スキルかもしれない。
2008-11-01
さまざまなリーダーのタイプ
『リーダーになるための扉を開く』の続きで、今回が2/5回である。
ちなみに、このインタビューに答えているキンバリー・ウィーフリング氏は、女性でアメリカ、ペンシルバニア州生まれ、ゼロックス・バーク社の子会社であるアウトサイド社の元プログラムマネジメント副社長で、現在は、リーダーシップ、コミュニケーションの分野を中心に、企業の人材育成のトレーナーとして活躍中とのこと。ヒューレット・パッカード社での10年間にわたる技術管理および製品開発の経験を生かし、さまざまなハイテク企業の立ち上げにも貢献しているとのこと。
しかし、組織の上位層やプロジェクトリーダー、技術リーダークラスを動かさなければどうにもこうにも、その目的を達成することはできないということが分かってきた。
組織内のリーダーと呼ばれる人たちがキンバリー・ウィーフリング氏が言うような素養を身につけていかなければ、我々エンジニアの明日はないのではないかと思う。または、自分自身がそのような素養を身につけてリーダーにならないと、自分やその下の者達が浮かばれないように感じている。だから、このようなリーダー論はソフトウェアエンジニアにとっても無縁なことではないと思っている。
ちなみに、このインタビューに答えているキンバリー・ウィーフリング氏は、女性でアメリカ、ペンシルバニア州生まれ、ゼロックス・バーク社の子会社であるアウトサイド社の元プログラムマネジメント副社長で、現在は、リーダーシップ、コミュニケーションの分野を中心に、企業の人材育成のトレーナーとして活躍中とのこと。ヒューレット・パッカード社での10年間にわたる技術管理および製品開発の経験を生かし、さまざまなハイテク企業の立ち上げにも貢献しているとのこと。
Leaders to Look forちなみに、自分は偉大な企業を作ったり、組織を優れた企業にすることを目的としているわけではない。組込みソフトエンジニア、特に優秀な組込みアーキテクトが高い能力を持っているのに評価されない、クリエイティブな仕事ができない、能力が高ければ高いほどこき使われ仕事が増えるという状況を改善し、優秀な組込みアーキテクトを育てたいだけである。
Interviewer: Can you, maybe, describe some different types of leadership for us?
インタビュアー:さまざまなリーダーシップのタイプについて、少しご説明いただけますか?
Wiefling: Some leaders are loud and bold and crazy like me – make a lot of noise and tell people, “Come on, everybody! Let’s go and do this!” That’s a very charismatic leader. Sometimes, this is called the “rock-star leader.” Everybody knows them; they have a huge personality. Steve Jobs, head of Apple; he’s a rock-star leader; I say it like this; these kinds of leaders take up all the oxygen in the room.
Then there’s something called a “level-five leader.” Level-five leader is somebody who comes in day after day, weak after weak, year after year, constantly working for the good of the team, the organization. When something good happens, all the credit goes to their team. When something bad happens, they look in the mirror and say, “How did I contribute to this bad happening? And they are constantly focused, give, ten, fifteen, twenty years, leading companies to greatness.
This is the king of leader that Jim Collins writes about in a book called Good to Great. It’s very easy to be a good company, but in order to be a great company, you need a level-five leader.
Then there is a very quiet kind of leader called the “servant leader.” This person is behind the scenes, serving their people, leading from behind, removing obstacles, providing resources, encouraging and supporting them, not getting the credit, and not even appearing to lead sometimes. This is the kind of leader that Loa-tzu says, “That kind of leader, when the people accomplish their goals, they say, “We did it ourselves!”
ウィーフリング:私みたいに、うるさくと、大胆で、無茶なリーダーがいますね-いろいろ騒ぎ立てて、人に「さあ、みんな! これをやってみようよ!」と言うようなタイプです。これは実にカリスマ的なリーダーですね。「ロックスター型リーダー」と呼ばれることもあります。誰もが知っている、強烈な個性を持っている人物です。アップル社の最高経営責任者であるスティーブ・ジョブス、彼がロックスター型リーダーです。私はこんなふうに言うんです。こういうタイプのリーダーは部屋中の酸素をみんな吸い取ってしまう、と。
それから、「レベル5型リーダー」と呼ばれるタイプがあります。レベル5型のリーダーは、来る日も、来る週も、来る年も、たゆまずチームや組織のために働き続ける人です。何かいいことが起これば、手柄はすべてチームのものとなります。悪いことが起きると、この手のリーダーは、鏡をのぞき込んで「今のこのまずい事態に、私はどう加担してしまったのだろう?」と問い掛けます。そして、5年、10年、15年、20年と、優れた企業にしていくことに、たゆまず力を注ぎます。
これは、ジム・コリンズが『ビジョナリーカンパニー2-飛躍の法則』という本の中で書いたリーダーの種類です。良い企業をつくることは実にたやすいことですが、偉大な企業を作るためには「レベル5型のリーダー」が必要です。
それから、「奉仕型リーダー」と呼ばれる、非常に物静かなタイプのリーダーもいます。このタイプの人物は舞台裏にいて、部下に奉仕し、背後から導き、障害を取り除き、あらゆる資源を供給し、部下を励まし、支え、手柄を自分のものにせず、ときには指揮していないように見えることさえあります。こうしたリーダーは、老子が言うところの「目的が達成されると、部下の者たちが『私たちが自らの手で成し遂げたんだ!』と言うようなタイプのリーダー」です。
しかし、組織の上位層やプロジェクトリーダー、技術リーダークラスを動かさなければどうにもこうにも、その目的を達成することはできないということが分かってきた。
組織内のリーダーと呼ばれる人たちがキンバリー・ウィーフリング氏が言うような素養を身につけていかなければ、我々エンジニアの明日はないのではないかと思う。または、自分自身がそのような素養を身につけてリーダーにならないと、自分やその下の者達が浮かばれないように感じている。だから、このようなリーダー論はソフトウェアエンジニアにとっても無縁なことではないと思っている。
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