IoTとは、「ありとあらゆるモノがインターネットに接続する世界」 らしい。ネットワークはすでに整備・構築されているので,センシングしたデータや入力した情報をつなげることで新たなサービスを提供するという発想だろう。
ちなみに,そのサービスにはクラウドかどうかは別にして情報を集約するデータサーバーが不可欠だ。だとすると,サーバーのメインテナンスやサービスソフトウェアのアップデートの管理費用がかかる。
IoT のビジネスの例として,BtoB で人的負荷の軽減によりコストダウンを計ることができると言う。でも,それってすでにかなりの分野でやっていることではないだろうか。
例えば,自動販売機の中のジュースや缶コーヒーがなくなると販売の機会損失となるので,サービス員が品物が切れていないかとうか見回ることになる。でも,その見回り作業はすでに,PHSやG3のモジュールに置き換わっている。IoTというキーワードが出てくる前から実現していたサービスだ。
また,消費者がお金を払うシーンではポイントカードがトリガーになって情報は集約され分析されている。これも,IoT 以前に確立していたサービスだ。
いまさら,BtoB の IoT で儲かりビジネスがざくざくあるようには思えない。BtoB の IoT は所詮マイナスをゼロに近づける取り組みであり,ビジネスの拡大には劇的に貢献するようには思えない。
そして次に考えるのがBtoBではなく,BtoC のIoTで儲かるサービスがあるのではないかということだ。
この分野で誰しもがこれは儲かるのではと考えるのが「健康に関する IoTサービス」ではないかと思う。
「健康に関する IoTサービス」に関連して,つい最近,気になるお知らせが来た。
2016.10.04 ウェルネスリンクサービスの終了について
自分はオムロンの体重体組成計と血圧計でウェルネスリンクサービスを使っているので,このお知らせを見て「おいおい,それが売りで買ったのにサービス終わっちゃうのかよ」とギョッとした。
このお知らせの内容は分かりにくいのだが,どうも,オムロンは OMRON connect をやめるのではなく, アプリを提供しているドコモヘルスケア(株式会社NTTドコモ 66%, オムロン ヘルスケア株式会社 34%)は,ダイエット用のアプリなどとっちらかっている複数のサービスをわたしムーヴとカラダのキモチに集約しようとしているようだ。
察するに,docomo と2者で運営してきたドコモヘルスケアのサービスは収益があまり上がらないので,アプリを統廃合して赤字にならないようにメインテナンス費用を圧縮しようとしているのではないだろうか。
一方で,オムロンのサイトに 11月1日から OMRON connect サービスが拡大するといニュースが上記のニュースとは別に掲載されている。こっちには Apple の Healthcare にも対応と書かれている。
docomo と オムロンの Exclusiveな関係では,サービスを黒字化することが難しくなってきたので,健康データの二次利用を希望する会社に開放して活路を見いだそうとしているのではないか。
実は,消費者がヘルスアプリやウェルネス機器に払うお金はそんなに多くないのではないか。ウェルネスとかヘルスケアと聞くと誰もがそのためなら金を出すという印象があるようだが,実際にはそうではないと思う。
病気の人は病院に行く。病院では健康保険によるバックアップがあるものの多大な経費になやまされていて経営に皆苦労している。
だからこそ,治療効果が高い,または,入院期間が短縮できる投資は積極的に行う。逆に言えば効果が見えない,入院期間の短縮に貢献するのかしないのか確証がないものには積極的には投資しない。
大事なのは「効果があるのかないのか」だ。患者からすれば,そこに自分の命がかかっているし,病院からすれば経営の継続がかかっている。そういったもにには金を払う。
だから,治療効果の明白な機器やサービス,医薬品は売れる。そこが曖昧な製品,サービスは売れない。
病院の中でさえ,そうなのに,一般消費者が効果が明確でない健康サービスにお金を払うだろうか。
医薬品医療機器法(旧薬事法)は広告規制があるので,医療機器として申請をしていない製品やサービスが診断・治療に対する効果効能を広告すると法律違反になる。プラズマクラスター付きの加湿器が風邪の予防に効果があると広告して売ったら違反だ。ウイルスを殺す効果を悪戯に強調するのも,かなり黒に近いグレーだ。
シャープのこのページを見て欲しい。消費者がイメージするウイルス防止といった印象とはかなり違うトーンの説明と感じると思う。これが医薬品医療機器法の広告規制を考慮した表現である。
だから,薬事申請していない製品やサービスが診断・治療に関する効果効能を広告することができない。そうなると,消費者への訴求が弱い表現となる。
BtoC の IoT サービスを成功させるには,規模の大きい情報サービスの準備と,サーバー保守費用を捻出するための,サービスに対する対価を回収するしくみが必要だ。
IoT 機器は1回売ったら利益はそれだけなので,問題は IoT を使ったサービスでペイするかどうかがポイントになる。
自分は,多くの消費者は IoT サービスに直接は金を払わないと思っている。インターネットの利用者は情報はタダで手に入るという感覚が染みついてしまったからだ。
よっぽどのことがないと,インターネット利用の消費者は情報やサービスには金を払わない。そう考えると,一般消費者から直接お金を回収するのではなく,広告を表示することで,公告主からお金を回収している Google や Facebook は上手いと思う。
情報サービスは裏方であり,結局は物が売れることで儲かるしくみにつなげることができないと利益につながらないのではないかと思う。
BtoC領域ではつながることによって得られる情報はタダという認識がある以上,IoT絡みの新規サービスの立ち上げにはリスクが伴う。
IoT の機器を売って,また,IoT絡みのサービスで儲けようと考えている方達,他のバズワードが辿った運命と同じように IoT のブームもあと何年かかもしれない。
少なくとも,ありとあらゆるモノがインターネットに接続することが大事なのではなくて,つなげて提供するサービスやそのサービスを利用する物販が,サービスを維持する費用を上回る価値を生み出せるのかどうかなんだと思う。
IoTの場合,単純な物販とは違って,サービスを提供するための初期投資が大きく,いったんはじめてしまうと簡単にはやめられない(物の販売のように在庫無くなったら終わりとはならない)だけに,リスクが大きいビジネスだと思う。
IoT というバズワードに踊らされて火傷しないように。
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