2009-12-05

就職氷河期をブレークスルーすための就活作戦

日経ビジネスオンラインの時事深層というコーナーに『6万人の「大学は出たけれど」』という記事が載っていた。

「誰でもいいから欲しい」終焉

 厚生労働省の調査によると、来春卒業予定の大学生の就職内定率は、10月1日時点で62.5%と昨年の同じ時期に比べて7.4ポイント低下。3人に1人の就職先が決まっていないことになる。


 ところが、リクルートワークス研究所が調べた大卒者の求人倍率は1.62倍。求職者を求人が上回る状況が続いている。求人倍率が1を切った2000年3月卒業生の採用時でも、同じ時期の内定率は63.6%と、今年よりわずかながらも高かった。

 求人はあるが内定率は低いーー。これは何を意味しているのか。

 日本企業が「質」による学生の選別を強めていることが背景にある。「企業を引っ張っていける優秀な人材しか採らない」ことを示している。
【引用終わり】

ようするに、不景気なので採用側の余裕がなくなり、長い間従業員を抱え込む日本の企業においては、どうせ採るならより後々組織に大きな貢献をする学生だけを採ろうと考えるようになったのだ。

そうなったら、もう競争だ。ここで学生のみなさんにアドバイスしたいのは競争は就活の期間だけではないということだ。

そこで、「もし、自分が超就職氷河期の時代にいる学生だったら、どんな作戦を取るか」について考えてみた。

まずは、企業がどんな人材を欲しているかである。日経ビジネスオンラインの記事を読むとどうも「即戦力」が欲しい訳ではなく、将来組織の幹部になってもおかしくないような人材を採ろうとしているということだ。技術者の場合は、少なくとも技術部長クラス、技術でその部門をリードしていけるような人材ということだろう。

ただし、ソフトウェアエンジニアの場合は技術的に修得しなければいけないことが満載だから、学生が就職試験を受ける時点でそれらの技術を身につけている可能性はほとんどない。

組織内で技術者教育を提供する立場から考えると、学んで欲しいスキルは山のようにある。
  • プログラミング言語(C, C++, C#, Java)
  • テスティング基礎
  • 設計プロセス
  • リアルタイムOS
  • 状態遷移設計
  • 構造化分析・設計
  • UMLモデリング
  • オブジェクト指向設計
  • リファクタリング
  • ネットワーク
  • データベース
  • セキュリティ
  • プロジェクトマネジメント
などなど。これらを学生時代に修得しておいてくれというのは無理だし、これらの技術は実際の仕事でどんなフェーズで何をやっているのかをよく見極めながら、現状の問題解決に必要な技術を習得させていかないと身につかないと思っているので、実践に入ってから学習した方がいいものも多いと考えている。

このような状況を考えると採用する学生に求めるものは何かということになる。

ひとつは、その組織が対象としている市場・ドメインに対して強い興味、関心を持っているかどうか、ふたつめは技術をスポンジのようにどんどん吸い込むポテンシャルがあるかどうか、三つ目はそれらの技術を組織内に展開できるかどうかだと思う。

3つめは技術リーダーになれるかどうかという指標なので、まずは置いておいて、ドメインへの関心とポテンシャルがあるかどうかについて考えてみたい。

ドメインへの関心は面接の際に趣味や質問攻勢によってすぐに分かってしまうだろう。面接官は企業ドメインのことを裏事情も含めて学生の何十倍もしっているから、知ったかぶりしてもすぐにばれてしまう。2チャンネルなどで情報を収集しようとしてもそのような薄っぺらい情報でやり合おうとするとかえって墓穴を掘る。となると、学生時代は好きなものをとことん追求するのがいいと思う。自分が熱中したことと、就活先の企業ドメインとの関係性が何かについてだけ抑えておいて、そこを説明し、メインは自分が何に集中したのかについて語るという作戦だ。(何も熱中したことがないのはその時点で難しい)

2つめの技術を吸収するポテンシャルがあるかどうかの判断は、履歴書や面接ではなかなかわからないしアピールするのも難しいと思う。そこで、自分が考えたのは学生時代に自分の成長のブログを作るという作戦だ。

例えば4年制の大学生なら2年~3年になったころから、自分の興味があることに対してどんな取り組みをしてどんな成果があったのかをブログに綴ってみるのだ。毎日でなくても毎週、もしくは月に2~3回でも更新を続け、どんなことに取り組み、どんな成果があったのか、何を反省しつぎに活かしたのかを写真や動画を入れて書いていく。

それって卒論、修論と同じだというかもしれないが、大学の先生の指導が入っていないぶんブログの方がその学生の実力がわかるし、日々の記録だからごまかしやうそ、見栄が効かない。その人の人生や姿勢が見える。

そして、そのブログの URL を人事担当に送るのだ。人事担当は技術のことが分からないから、採用を希望している部門の技術部長クラスあたりに打診するのではないかと思う。自分なら、そのブログをざっと見ればその人がどんな人間でポテンシャルがあるかないかをだいたい判断できると思う。

文章がだんだんうまくなているかどうかも指標の一つになる。ようするに一夜漬けではごまかせないレポートだと思うのだ。

以上、自分の成果をブログに書いて就活に活かすという作戦いかがだろうか?
ちなみに、転職を考える技術者も内部情報を出さずに純粋にどんなスキルを獲得したかを綴るブログを書きためておくと自己アピールに効果があるかもしれない。

2 件のコメント:

zacky1972 さんのコメント...

> 何も熱中したことがないのはその時点で難しい

どうも最近そういう学生さん多いみたいです.それではまずいと思うので早いうちに何か指導したいのですが,正直どういう指導をすればいいか途方に暮れます.
自由の多さをもてあますみたいですね.むしろそういう学生さんには選択の自由を与えない方がいいのかもしれないです.

sakai さんのコメント...

ZACKYさん、コメントありがとうございます。困りましたねえ。『スキルの伝承は8割以上の企業が不十分な状況』にも書きましたが、

1. 自己選択(作業する場を明確にし、環境を整える)
3. 作業に関わる(提示は子どもが理解できる速度で)
3. 集中現象-繰り返しの活動-(姿を隠す、じょまをしない、口出しをしない)
4. 達成感・満足感(共感しともに楽しむ)

のサイクルを子供の頃に回す環境がなかったのかもしれません。やはり、小さい成功体験を積み重ねさせることしかないのではないでしょうか。そのときに、上記の自己選択の要素を取り入れることができるかどうかがカギのような気がします。