2008-06-08

カイゼンの範囲

日経ものづくりのセミナーで『トヨタ流モノづくりの人づくりの心 伝承塾~中堅社員コース~』というのが載っていた。(申込み受付は終了したとのこと)

講師はトヨタ自動車TQM推進部課長の方で、社員のやる気向上を基本に人財育成、国内企業の繁栄の為の社会貢献活動を行い「トヨタ流:モノづくりと,人づくり 心の伝承塾」を設立し,社内外を問わず精力的に講演活動を実施しているのだそうだ。

トヨタが惜しげもなく自組織での事例を外部に紹介するのは、このようなセミナーを通じてまったく違う業種、業務の人たちが行っている活動からトヨタ自体が得るものも大きいかららしい。

この話はソフトウェアエンジニアが組織の外で直接的な企業活動とは別にコミュニティ活動やIPA SEC(ソフトウェアエンジニアリングセンター)の活動などをすることにも通じる。

組織の外に出て、自分たちとは違う環境の人たちの活動や考え方、成功体験、失敗体験を聞くのは技術者個人の刺激にもなるし、いずれは自組織の改善にも役立つと思う。

でも、組織への貢献の度合いを数字で表すのは難しいので、組織の外で何らかの知見を得たことがない上司しかいないと、部下がそのようなコミュニティ活動したいといっても許可してもらえない場合がある。

組織の外には役に立つ情報があふれている(役に立たない情報もあふれているが・・・)のに、それらを利用せずに自分たちだけで解決方法を見つけようとするのはとてももったいない、非効率的だと思う。

さて、トヨタのセミナーの話に戻ろう。以下、セミナーの目次の一部だ

トヨタ流モノづくりの人づくりの心 伝承塾~中堅社員コース~ 目次より引用】

2.【「お客様第一」の本質とは何か,その大切な心について】
【A】企業や社員が戦う相手は何か?
【B】お客様の心に感動につながる仕事をしてこそ,成果が認められる
【C】商品の品質不良と,そのトラブル対応の重要性について

<トヨタの事例紹介>
(1)「1本の電話応対で3億円の仕事を失った話」
(2)「嫌われ,つまはじきにされた一人の社員が会社をナンバー1にさせた」
<一般事例紹介>
(1)「デパートに夢を買いに来たお客様への心ない店員の対応」
(2)「風呂場の掃除作業員が,日本一のゴルフ場にさせた話」
(3)「お客様の心に感動と言う商品を提供した店員の話」
(4)「レストランの店員のルールを破ったまごころの対応」


5.【仕事の業績を上げる職場改善の基本】
【A】問題解決に重要な「現地現物」の行動
【B】改善の基本は徹底した「なぜなぜ」の追求
【C】現場改善のネタを見つける方法
【D】職場にある7つのムダ
【E】「4S」の心と必要性について
【F】生産品質の管理と改善について
【G】新技術創造の環境づくりと発想のコツ
【引用終わり】

セミナーの目次を見ただけでも、ためになりそうな話が満載のようだ。でも、残念ながらこのセミナーに参加する予定はない。

さて、今回の記事で言いたいことは改善の範囲のことだ。あまり深い掘り下げはない。

何が言いたいかというと、改善を実施し顧客満足を高めることを考えるときは、メーカーだけでなくサプライヤーも含めて考えて欲しいということだ。

自分は現在メーカーに所属しているが、ソフトウェアを発注している会社を「外注」とは言わず「協力会社」と言うようにしている。「外注」ということばには何か見下したような響きを感じるからだ。

自分は協力会社のソフトウェア技術者の中に非常に優秀な人が何人もいるのを知っているし、彼らと仕事をすることでこれまで何回も助けられたし、何年も一緒に仕事をしていると仲間意識も強くなった。

サプライヤーはその名の通り供給者という意味で、ソフトウェアを請負契約で発注して、ソフトウェア(部品)の供給を受けるのでサプライヤーと呼ぶ。

大きな組織になると、メーカーは納期短縮のツケを結果的にサプライヤーに押しつけることになることがあると思う。発注者と受注者の関係があるためどうしても受注者の方が立場が弱くなる。

しかし、メーカーはサプライヤーの協力なしに顧客満足の向上を達成することはできない。メーカーのエンジニアだけが顧客満足の達成を実感し、サプライヤーは黙々と仕事してその対価としてサラリーをもらうという構図は何とかなくせないのだろうか。

そしないと、このブログで再三主張しているように、組込みソフトエンジニアのモチベーションの源泉を、実際に組込み機器を使ってくれる顧客の満足に重ねることができるのはメーカーの技術者だけで、サプライヤーの技術者には関係のないことになってしまう。

現場で製品作りをしてきた者にとって、メーカーの技術者とサプライヤーの技術者にそれほど大きな違いはないとずっと感じていた。むしろサプライヤーの技術者にも、その製品がどのようにユーザーに使われるのかをよく知ってもらった方が、よりよい製品、顧客満足の高いソフトウェアを作り上げることができると思っている。

だから、自動車でも携帯電話でもなんでもいいが、メーカーはサプライヤーのエンジニアを仲間であるという意識を持って、ソフトウェア開発に関するカイゼンの範囲に含めて考えるべきだと、『トヨタ流モノづくりの人づくりの心 伝承塾~中堅社員コース~』の内容を見たときにふと思った次第である。
 

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