2007-08-09

組込みソフトで勝ちたい人に捧ぐ

今回は宣伝が入っているのでへりくだってですます調でいきますです。

さて、技術評論社の 組込みプレス Vol.8 が8月11日に発売になります。特集1- 制約の多い組込みソフト開発-『効率化と品質向上2つのアプローチ』に寄稿&特集記事をプロデュースしたので内容を紹介したいと思います。

この特集1のサブテーマは「組込みソフト開発の心技体を鍛える」なんですが、開けてびっくり、特集2のテーマは「設計力」ブート★キャンプでした。組込みソフトもスポーツなんですね。

記事を読んでもそんなに疲れるものでもないので、今回の特集記事は夏休みの間にじっくり読んでいただきたいと思います。

今回の号は組込みソフトで「勝ちたい」人に最適です。もしも、あなたが組織の内外で認められ、発言力を増し、出世したいのなら実績を上げることが一番の近道です。組込みの世界で実績を上げるためにはヒット商品を開発したプロジェクトのメンバになっている必要があります。どんなに美しいアーキテクチャを構築しても、どんなに読みやすいコードを書いても残念ながらその成果を認めてくれる人は組織内にはほとんどいません。

組込みの世界では、どれだけたくさんの商品を売り、お客さんに満足してもらい、また次の新しい製品を買ってもらえるかどうかが勝負の分かれ目となります。あなたがサプライヤーの社員だったとしても同じです。ヒット商品のソフトウェアを供給できればそれが実績となります。

火消しが上手い人はかわいそうですが一つ火消しが終わると、もっと大きく燃え上がっている現場に投入されてしまいます。そうならないいためには、ヒット商品のソフトウェアの開発チームにいることが大切です。

今回の特集記事はQFD(Quality Function Deployment:品質機能展開)の技術を使って、市場要求や商品に求められる品質を分析し、組込みソフトの実装技術に結びつける方法を紹介しています。

ようするに売れる商品の要素を分析して、自分たちの得意な技術、他社がまねしにくい商品価値が凝縮されているソフトウェア資産を開発する方法なのです。これがうまくいけば、エンジニア個人としての自分も仕事が楽しくなるし、組織も売れる商品ができてありがたいし、お客さんにも喜んでもらえます。

特集記事の執筆者は酒井と、EEBOFのメンバーである安部田 章さんと、QFD研究の第一人者である山梨大学の新藤 久和先生です。安部田さんは QFD を基礎から丁寧に解説し、どのように組込みソフト開発に活かしていけばよいのかを書き、酒井は現状のソフトウェアシステムを分析してそのアーキテクチャを可視化した上でQFDを使うことで再利用資産を抽出する方法を示し、新藤先生はQFDの歴史と最新の研究を紹介しています。

安部田さんはトップダウン、酒井はボトムアップ、新藤先生はバックとフロントエンドの視点でQFDを解説するという、この一冊でQFDが丸ごと分かるというお得な特集となっています。

(特集2 では、SESSAME WG2 のメンバーである、山田、森、國方トリオが設計力強化のためのブートキャンプを張っていますのでこちらも注目)

もしもあなたが組込みソフトで勝ちたいのなら是非ご一読を。(ちなみに、商売とは関係のない研修者、学生のみなさんが読むと勝つ組込みソフトってどんなものかが分かります。)

組込みプレス Vol.8 特集1 第1章 特集のはじめに より 引用】

 ユーザー要求や市場要求が明確になれば,組込み製品を使ってくれるユーザーの満足を高めるために何をすればよいのかが分かり,モチベーションの向上や改善への意欲につながります.ユーザー要求や市場要求を実現することができれば,自分自身の満足も高まり,商品が売れることで自分やプロジェクトの成果を組織に認めてもらうことができます.また,要求を満たすための技術が明確になれば,その技術を習得するという目標が定まり必要な技術を身につけるために最短の道筋を進むことができます.

 そして,ソフトウェア開発の途上でソフトウェアプロジェクトチームの意見が別れ,不協和音が聞こえてきても,「ユーザーや市場の要求をより満たすにはこちらの選択の方がよい」という導き方ができます.ソフトウェアエンジニアが10人も集まれば,それぞれの好みや癖により,ソフトウェア開発の方法論やアーキテクチャの選択に差異がでてきます.この差異を組織や会社間の上下関係により押さえつけてしまうこともできるでしょうが,それでは心技体の「心(技術者のモチベーションや改善への欲求)」や「体(チームビルディング力)」を下げてしまいます.

 市場やユーザーが商品に求める要求や品質が明確になっており,それらの重要度があらかじめ分かっていれば,そのときプロジェクトチームは何を取捨選択すればよいのか,どんな技術を習得すればよいのか根拠を持って判断することができます.プロジェクトリーダーの個人的な趣味や声の大きい技術者の好みではなく,ユーザー要求をベースにプロジェクトチームの舵を切ることができるようになります.欧米の責任と権限が明確に分けられたドライなソフトウェアプロジェクト運営と,パフォーマンスの高いうまくいく日本の組込みソフト開発のプロジェクトのあり方の違いは「誰のために仕事をしているのか」「今の仕事は何のためやっているのか」という部分の気持ちの持っていき方の違いであると言えるでしょう.

【引用終わり】

以上、宣伝でした。

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