2006-03-18

なぜ、『組込みソフトエンジニアを極める』を書いたのか?

書籍 『組込みソフトエンジニアを極める』 を一言で 語れと言われたら、「この本は組込みソフトウェア開発のコンセプトモデルだ」と言うだろう。

本の中で、組込みソフトウェア開発で使えるテクニックやアクティビティを具体例を示しながら紹介しているが、それはあくまでも”例”であって、その通りに実施してもらうことがこの本の目的ではない。

真っ白なキャンバスのように何にも毒されていない、目をキラキラさせた新人技術者ならいざしらず、何年も何十年も自分のスタイルで組込みソフト開発をやり遂げてきた技術者の開発スタイルを本一冊読んだだけで変えることなどできるはずがない。

な ぜ、この本を組込みソフトの開発現場にいる技術者やマネージャに読んでもらいたいかと言えば ”技術者である自分” と ”組織” と ”ユーザー” の要求、要望をオーバーラップさせ、モチベーションを高めながら顧客満足を高めるには、どんな気持ちで仕事に取り組めばいいのか、また、どのようなスキル を習得すればよいのかを考えるきっかけにしてもらいたかったからである。

それを伝えるために「東洋電子レジスター株式会社」という架空の電子レジスターの会社を作り、新人、中堅、ベテラン、ハードウェア出身のマネージャ、ビジネス系エンジニアという5人の人物を登場させ、本の中で彼らにいろいろ語らせ行動してもらった。

彼らがソフトウェア開発の中で何を考え、どんな感情を持って他のメンバーに接していたのかを、それぞれの登場人物の日記としてつづったのが WEBサイト『組込みソフトエンジニアを極める-外伝-』である。

ソフトウェア技術者が仕事上のやりとりの中でどんなことを考えているのかを知りたい方は、『組込みソフトエンジニアを極める-外伝-』 を参照していただきたい。

繰り返しになるが、書籍 『組込みソフトエンジニアを極める』 で示した組込みソフトウェア開発の手法、施策はあくまでもひとつの例であって、「これはいい。これは使える。」と思ってもらえれば採用していただきたいが、手法や施策を紹介することがこの本の真の目的ではない。また、手法や施策を理解することと実際に現場で根付かせることとのギャップは思いのほか大きい。

だからこそ、この本を読んでもらうことで、組込みソフト技術者がどんなスタンスで組込み機器の開発に取り組み、モチベーションを高めながら新しいスキルを獲得し、顧客満足の高い商品を世に生み出していったらよいのかを伝えたかったのである。

そ れが押さえられれば、多少の壁にぶつかっても障害をはね返す理由ができるし、忙しくてもモチベーションを高く持って仕事に取り組むことができ、製品をリリースしたときの喜びは今以上に大きくなるはずである。

必ずしもものづくりを達成した喜びの大きさはサラリーの高さに比例しないかもしれない。でも、逆境に立たされているエンジニアが自分のスキルでその逆境を乗り切ることが できたならお金では買えない経験と満足感を得ることができるはずである。

ただし、楽して満足を得ることはできないので、仕事で辛い場面 をどのような心構えで乗り切るのか、余裕を持ってクリエイティブな仕事ができるようになるにはどんな技術を習得しなければいけないのかを、組込みソフトエンジ ニアや組込みソフトエンジニアを取り巻く人々に理解して欲しいと思いこの本を書いたのである。

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