2016-05-01

三菱自動車の燃費不正問題に思うこと(プレッシャーの悪影響)

三菱自動車の燃費偽装問題では、不正なデータの操作が行われた軽乗用車4車種の実際の燃費が、カタログなどに記していた公表値と大幅に異なる可能性が出ていて、5~10%ぐらいの乖離があり、大幅に異なる場合には型式指定の取消しがあるかもしれないとのことである。

eKワゴンの当初の燃費目標は2011年2月の時点で26.4km/リットルだったが、スズキが2012年9月に28.8km/リットルのワゴンRを発売すると、三菱自動車内の目標は29km/リットルに引き上げられ、ダイハツ工業が2012年の12月に売り出した「ムーヴ」の燃費が29km/リットルになるという情報が伝わると、目標は29.2km に引き上げられた。

もしも、燃費目標と根拠となるメカニズムがセットで語られていなかったのだとしたら「手段を選ばず目標を達成せよ」と命じたのと同じだと思う。直接不正を指示してはいなくても、結果的にはそうせざるを得ない所に追い込んだことになる。

三菱の軽自動車もアイドリングストップの機能は搭載していたようだが、ライバル会社はそれ以上のこと(スズキのエネチャージなど)をしているのに、新たな技術開発なくして燃費性能が上がるわけがない。

売り上げが上がらないから売れるような物を作れとか、燃費性能が負けているからそれ以上の物を作れとか、およそ技術で立脚している会社の目標とは思えないようなことを言うトップマネジメントがいるんだと思った。そんなことなら技術的背景がまったなくても言えるでしょ。

こちらの時事通信の記事によると社長は「基本的な数字を操作しているとは夢にも思わなかった。性善説に立っていた」と言い,担当部長は「何としても燃費目標を達成しろ。やり方はお前らで考えろ」と言ったそうだ。繰り返すが,技術で飯を食っている会社のマネジメント層が発する言葉とは信じられない。技術的根拠に重きを置かず,その会社のコア技術,コアコンピタンスとなる技術が何かについて知らない,知りたいと思わないなら技術に立脚した会社とは言えないと思う。

安全分析で著名なMITのナンシー・レブソン教授が、スペースシャトルコロンビアの事故をモデル化した図がこの図だ。(出典はこちら

これで注目して欲しいのは、左側の予算カットや性能に対するプレッシャーがミッション成功に対してマイナスの影響を与えているということだ。

三菱自動車の不正の件は安全への影響はなかったようだが、ユーザーの信頼を失う結果となった。技術者が伸び伸びと開発に専念できない環境、プレッシャーだけが強く、モチベーションやインセンティブがない環境が最終的には組織に損害を与えるというモデルはあると思う。

そのベースが人間の論理的でない部分から成るので、証明するのが難しいが、事故分析の分野では事故当事者にかかっていたプレッシャーを考慮に入れる例は多くある。

ダイハツ・ムーヴ “燃費チキンレース”はもうしない!』という記事もあるから、ダイハツは燃費競争がいずれ破綻することが分かっていたようだ。

この記事で注目すべきは、「もうこれ以上の燃費性能を顧客は望んでいない」というところだ。顧客は望んでいないが、ライバル会社に負けるから燃費の目標数値を上げるというところが間違いの元であり、誰のために商売しているのかを見失った時に問題は起こるということを思い知らされた。

今回のケースは顧客のためではなく自分達のために安易に燃費目標をつり上げ、結局は燃費を偽って顧客の利益に背反することをやってしまった。仮に軽自動車の競争で後塵を拝していたのだとしても、顧客のことをないがしろにする企業に明日はないと思う。多くの社員がそうではなかったとしても、ボードメンバーに顧客を気遣う気持ち(Awareness)よりも利益が先に立つ人がいると危ない。

また、三菱自動車の燃費不正の問題は、経営層が技術に立脚しないプレッシャーを社員にかけることのリスクが明白になった例であり、どの企業にもありうる教訓にしないといけないと思った。


1 件のコメント:

ふくろうたろう さんのコメント...

私は、若い頃20年位前ですが、特殊なコマンドを作らされた事があります。あるふたつのボタンを同時に3秒以上押しつづけると、アイドリン回転数をギリギリまで下げるのです。それは、陸運局に燃費の申請する際に自動車会社の同行者に指示されるアクションでした。三菱ではありません。