【『20歳のときにしっておきたかったこと』 第6章 より引用】
成功の秘訣は、みずからの情熱につき従うことである---一体、何人からこうアドバイスされたことでしょう。きっと多くの人からこう言われた経験があるのではないでしょうか?何をすればいいのかわからなくて悩んでいる人に、こう言うのは簡単です。でも、このアドバイスは単純すぎて、人を惑わせます。誤解しないでいただきたいのですが、わたしも情熱は大好きですし、自分を突き動かすものを知っておくのは、とても大事だと思います。ただ、情熱だけでは足りないのです。【引用終わり】
情熱は出発点に過ぎません。自分の能力と、それに対する周りの評価を知っておくことも必要です。とても好きだけれど、必ずしも得意でないことを仕事にしようとすると、悩みが深くなります。パスケットボールが好きだけれど身長が足りない人や、ジャズの大ファンだけど音程を外す人もいるでしょう。どちらの場合も、プロとしてではなく、熱心なファンとして、試合を見に行ったり、コンサートに足を運んだりすることはできます。
情熱を傾けられるものがあり、能力もあるけれど、それを活かす市場がない、という場合があるかもしれません。たとえば絵がうまくて描くのが好きだとか、サーフィンのボードつくりが好きで波乗りが得意だとしても、こうした才能を活かす市場は小さいのが実情です。自分が夢中になれることを仕事にしようとすると、欲求不満に陥るのは目に見えています。仕事にするのではなく、すばらしい趣味だと考えた方が賢明でしょう。
逆に、能力があり、それを活かせる市場が大きいのであれば、その分野で仕事を探すべきだと言えます。たとえば、実績のある会計士なら、財産諸表を作成できる人間のポジションはつねにあります。世の中のほどんどの人は、こうして生活をしています。自分のスキルを使える仕事があるけれど、早く家に帰って、自分が好きなこと---趣味に没頭したいと思っています。週末や休暇を指折り数えて待っています。あるいは引退の日を待っているかもしれません。
最悪なのは、仕事にまったく興味が持てず、その分野のスキルもなく、いまやっていることを活かせる市場もない場合です。古典的なジョークに、エスキモーに雪を売るセールスマンの話があります。雪が嫌いだし、セールスの腕もないのに、その仕事をやっているのです。これは最悪です。
情熱とスキルと市場が重なり合うところ、それが、あなたにとってのスウィート・スポットです。そんなスポットを見つけられたら、仕事がただ生活の糧を得る手段で、仕事が終わった後趣味を楽しめるのではなく、仕事によって生活が豊かになるすぱらしいポジションにつけることになります。こんなに楽しんでいてお金をもらっていいのかと思えることを仕事にする---これが理想なのではないでしょうか?中国の老子は、こんなことを言っています。
生きることの達人は、仕事と遊び、労働と余暇、心と体、教育と娯楽、愛と宗教の区別をつけない。何をやるにしろ、その道で卓越していることを目指す。仕事か遊びかは周りが決めてくれる。当人にとっては、つねに仕事であり遊びでもあるのだ。
「情熱とスキルと市場が重なり合うところ、それが、あなたにとってのスウィート・スポットです。」という一節を読んでちょっと目から鱗が落ちた。
- 情熱だけでもダメ、スキルがなければいけない
- 情熱とスキルがあっても市場がなければいけない
現実的な命題だなと思う。第一に好きなことがないという状態では話しが始まらない。好きでもスキルがなければその道で飯を食っていくことはできない。若いときはスキルがないし、何が好きかもまだよく分からない時期があった。スキルがつくことで、情熱を傾けることに値する仕事かどうかが分かることもあるだろう。
そして、残念ながら情熱があってスキルがあっても市場がなければ食っていけない。これはティナ・シーリングのような自分自身や他人が通り抜けてきた様々な経験を知っている者だからこそ持てる視点なのかもしれない。
自分は好きなこと、自分のスキルが活かせることで対価を得るにはどんな市場があるのかを考えるのが好きだ。それはすなわち、自分が他人からどのように評価されるのか、自分のスキルや成果に対してどのような対価が妥当と考えるのかを気にしているということでもある。
なぜか。なぜなら、それでいけるという分野があれば、ティナ・シーリングが言うようにそこが情熱とスキルと市場が重なり合う自分にとってのスウィート・スポットになるからだ。
それが見つかれば、こんなにいいことはない。そんなスポットを見つけられたら、仕事がただ生活の糧を得る手段で、仕事が終わった後趣味を楽しめるのではなく、仕事によって生活が豊かになるすぱらしいポジションにつけることになるからだ。
こうなれば最高だ。スキルを高める努力が苦にならないし、スキルが高まることでより価値の高い成果を上げることもできる。
この話は起業したいと考える人にだけ当てはまるのかというと、必ずしもそうではないと思う。日本では天職を探すというキーワードが広がっているように感じるが、現実問題としてはそこに市場があるかどうかという点は重要だ。
市場がないところに飛び出してしまうのはやはりリスクが大きいと思う。30代、40代はスキルを高めるとともにそのスキルが活かせる市場を見つけることに注力を注ぐべきかもしれないと思った。
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