2008-12-07

進学塾のソリューションを考える

みなさんは、日本の小学生向けの進学塾のアプローチの仕方をご存じだろうか。簡単に言えば、小学5年生のうちに6年生のカリキュラムをすべて履修してしまい、6年生になったら志望校に合わせた受験対策のための勉強をするという方法だ。

それは小学生本人にとってはとても過酷な勉強方法であるが、やりきることができれば効果は絶大だ。なにしろ一年分も前倒ししてカリキュラムをこなし、一年間も受験の対策をするのだから、そんな勉強の仕方をしていない子供はなかなか立ちゆかない。

自分がこの状況に問題点を感じるのは、偏差値の高い学校に入学することをゴールにしていることもさることながら、目的を達成するためのソリューションを考えているのは進学塾サイドであり、生徒や親は提供されたソリューションに乗っかっているだけだという点だ。

問題を解決するための方法を自分で考えてないということ=問題解決力が低いということにならないだろうか。あらかじめ答えの決まっているテストに回答して得点を競うというということは、知識と回答のパターンの記憶の勝負とも言える。

東大合格生のノートはかならず美しい』という本が売れているが、この本で紹介されているノートの書き方をまねしてしまったのではたぶんダメなんじゃないかと思う。ノートの書き方のくふうを考える→やってみる→調子を見る→改善してみる、といったP(Plan)→D(Do)→C(Check)→A(Action)を回して確立した結果がこの本で紹介されてる美しいノートなのではないだろうか。

だから、すでに確立されてしまっているソリューションをまねしただけでは効果は半分ぐらいしかないのではないかと思う。技は自分で苦労して編み出したときに最大の効力を発揮する。プロフェッショナルが考えたソリューションをただ単にまねするのではなく、少なくとも自分向けにテーラリングするくらいのくふうがないと力がつかない。

『問題解決能力』はこのブログサイトにたどり着くキーワードの常に上位にランクされている。過去に書いた『問題解決能力(Problem Solving Skill):自ら考え行動する力』の記事の影響だと思う。この記事にも書いたけれど、問題が何かを見据えて、その問題を解決する能力が高いと、その問題を解決するための知識やスキルは何かが分かる。要するに誰かから指示されなくても、自分で問題を解決し、問題解決のために必要な知識、スキルを身につけることができる。問題解決に必要のない知識、スキルを身につけなくてもいいから効率がいい。

問題解決能力が高いということは、自立した万能選手であることと同等だと思う。後は、その万能選手に燃料を与えてあげるだけだ。その燃料となるのがエンジニアに対するモチベーションであり、モチベーションは顧客満足と考えると組織の価値ともオーバーラップするからよいよとこのブログで言い続けている。

進学塾は自分たちのビジネスのために最大の努力をしており、そのソリューションは確かにすごいと感じる。ただ、問題はそのソリューションを使った教育は答えのない問題を解決する能力を高める訓練にはなっていないという点だ。

この問題を解決するにはどうすればいいのか。それには教育に対する顧客と顧客満足は何なのかを考える必要がある。教育サービスの顧客が子供の親であり、親が有名な学校に子供を入れることが顧客満足なら進学塾のアプローチは間違っていない。

教育の目的を、子供が成長したときに自立して生きていくことと考えるのなら、教育サービスが「子供が成長したときに自立して生きていくこと」につながっていかどうかを常に確認しておく必要があると思う。
 

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