日経ビジネス 2007年4月2日号の特集記事 “抜け殻”正社員-派遣・請負依存経営のツケ-を読んで、ついにここまで来たかと思った。
最近、システム業界では「プロジェクトマネジメント専門会社」が相次いで設立され、派遣人材の管理やスケジュール管理など本来は元請けが担うべき役割を彼らに代行してもらっているというのだ。
プロジェクトが頓挫しそうになると大手の元請けが次々と「プロジェクトマネジメント専門会社」に助けを求めて駆け込んでくるという。
正社員の技術力が空洞化し、プロジェクトマネジメントも外部にやってもらう。そうなると社員は何をやるのだろう。
日経ビジネスの記事では、大きな企業の本社で働く大卒正社員は「業務改革推進室」「顧客満足度向上委員会」「ISO取得準備室」「環境対策委員会」など次から次へとできる新しい組織に回され、「ああしろ、こうしろ」と、どんどん現場にボールを投げるばかりでピッチャーばかりになってしまったとある。
1995年から2005年の10年間に、日本の正社員は405万人減り、請負、派遣などの非正社員が642万人増えたそうだ。この結果、企業は人件費が圧縮され、社会保険や退職金・年金の負担も減り、大したヒット商品もないのに過去最高益を更新する会社が続出した。
当然、企業活動の最前線を非正社員に任せっぱなしにしたのでは、抜け殻化してしまうが、そう分かっていても、一度その“うまみ”を知ってしまうと、やめられなくなるのが請負・派遣依存症の怖さだと記事に書かれている。
組込み業界は、前述のシステム業界のようにプロジェクトマネジメントを外部に委託するところまではいっていないと思うが、このままソフトウェアの規模、プロジェクトの規模が拡大し続けるとシステム業界と同じようになるかもしれない。コアな技術が何かを見極めないまま、協力会社にソフトウェア開発のほとんどを依存し、メーカーの技術が空洞化していることは実感として感じるが、プロジェクトマネジメントまでも外部に委託してしまうと、いったい正社員は何をするのだろう。
組込みの場合、業務ドメインに特化した知識というのは、それなりにたくさんあるので、それらの知識を知っているだけでできることだけが正社員の仕事になってしまう。
このような技術者はその業務ドメインに長くいることだけがアドバンテージとなり、ソフトウェア工学の技術やプロジェクトマネジメントのスキルもない。そんなことは自分たちもうすうす気づいているので、何とかその組織にしがみつこうとする。いろいろ不満や愚痴を言っていても、技術やスキルに自信がなく、その業務ドメインの知識だけがアドバンテージであることが本能的に分かっているので自ら組織を去ろうとはしない。
でも、そんな技術のあるものが評価されずに、業務ドメインの知識だけを持っているものが評価されるような状態は長くは続かない。
メーカーでもサプライヤーでも請負でもなんでもいい。技術を持って、成果を上げることができるエンジニアが高く評価されるべきであり、まともな競争社会である限りその方向に近づいていくはずである。
貧しい時代「教育は人を裏切らない」といい、貧しくても教育だけはきちんと受けさせたいと考えた親がいたように、「技術の修得はエンジニアを裏切らない」と信じたい。
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