発火や破裂を防ぐ新素材を採用したリチウムイオン電池が、早ければ2010年第1四半期に登場する。(ロイター)
という記事が itmedia のニュースに出ていた。そもそも、リチウムイオン電池は内部でプラス極とマイナス極がショートすると、電池内部の温度が一気に上がり発火したり破裂したりして危ない。よく、ニュースでパソコンから煙が出ているような画像が出ていたりする。リチウムイオン電池のメーカーは両極がショートしないようにくふうするのだか、製造の不良などでまれに事故が起こる。煙がでるのは非常にインパクトがあるので大騒ぎになるし、実際にかなりのエネルギーを内包しているので危ない。
そんな折、この新技術(素材) Stobaは電池のプラス極とマイナス極の間に置かれ、電池の温度がセ氏130度まで達すると 多孔質物質が保護膜に変わり、反応を遮断するという。
【リスクを下げるということ】
ここで考えて欲しいのは、リスクを下げる対策は電気、機械、ソフトどれでもいいということだ。機器を使うユーザーからすればリスクをゼロにしろとは言わないから、どんな方法でもいいのでリスクを許容以下に下げて欲しい。それが電気的対策でも、メカ的対策でも、ソフト的対策でもよい。
ところが、メカ、エレキ、ソフトのそれぞれのエンジニアがそれぞれのチームと密に連携できていないときに事故は起こる。それぞれのチームが他のチームで安全対策をしていると思い込んでしまっているときなどが危ない。
このリチウムイオン電池の発火を防ぐ新技術が仮に世の中に浸透したときのことを考える。仮にある機器のソフトウェアが何かしらの電池ショート時のリスクコントロール手段を実装していたとしよう。次の製品では、この Stoba 技術が採用されるので、ソフトの対策は外してもいいやと考えたとする。しかし、電池は取り外し可能で古い電池とコンパチだったら古いものも使える。
そうなると組み合わせによっては、ソフトウェアで実装したリスクコントロール手段が効かないということになる。事故が起こって初めて「あっ」ということになる。
システムが大きく、複雑になるとこのような複合的な原因によるリスクが増える。これまで、装置全体を把握できるエンジニアがそのリスクを抑えてきた場合、一人で全体を見渡せない状況になってきたら、システマティックにリスクを低減する方法を採用していかなければいけない。
あっちのチームがやってくれていると思うから大丈夫という感覚が、ユーザーを危険にさらすことになるのである。